アンチマネーロンダリングで日本の金融は変わるのか?
『アンチマネー・ロンダリング/テロ資金供与対策』って、みなさんご存知でしょうか。
それぞれ、『AML/CFT』と略されたりします。
世間一般ではあまり話題になっていませんが、金融業界では今非常に熱く、業界全体がざわ・・ざわ・・している問題です。
日本国内にいると『テロ』と聞いても他の国の話と思われてしまうので、ピンとこないひとのほうが多いのではないでしょうか。
『マネーロンダリング』って言葉くらいは聞いたことがあるんだけど・・。
と言うひとも多いと思います。
将来的にカード会社で契約をするときに影響がでてくる可能性があります。
今回は『アンチマネー・ロンダリング/テロ資金供与対策』について、金融業界がざわ・・ざわ・・している背景もあわせて解説します。
それではまいります。
マネーロンダリングって何!?
オレオレ詐欺や薬物の不正売買などの取引で手に入れたお金を、正当な取引をして手に入れたお金として社会に還流させることをいいます。
日本語でいうと『資金洗浄』で、まさにお金を洗ってしまうことですね。
不正な手段で手に入れたお金=汚いお金を、あの手この手の色々な方法でジャブジャブと洗って、正当な手段で手に入れたお金=きれいなお金にするわけです。
金融取引をくりかえし行ったり、債権や株式を購入したり、さまざまな取引を組み合わせることで元々のお金の入手方法をわからなくします。
なぜマネーロンダリングをする必要があるの!?
例えば、反社会的勢力がヤミ金で稼いだお金が10億円あるとします。
ヤミ金は違法ですので、申告はできません。
ですので税金も納めていません。
不動産を買おうと思っても、税務署がすぐにとんできてお金の出所を追及されます。
銀行の口座に預けれ入れをするのも、10億円だと何のお金なのかの確認をされるでしょう。
10億円あるのに使えないお金となってしまいます。
結果として、キャバクラなどで豪遊するしか使い道のないお金となってしまいます。
こういったお金をマネーロンダリングをおこなうことで、自由に使えるお金にしているのです。
マネーロンダリングの具体的な方法は!?
マネーロンダリングは色々な方法があります。
お金を小さく分散して金融取引をなんどもくり返しおこない、あとで一つにする方法が一般的です。
カード会社で極度額100万円のカードを作成し、出金・入金をくり返して不正なお金をわからなくすることも可能です。
6億円の当たり宝くじを10億円で購入するのもマネーロンダリングです。
不正な手段で手に入れた10億円が手元にあったとしても、そのままでは使えない10億円です。
使おうとしたらすぐに税務署か警察がやってきます。
そこで誰かが当選した6億円の宝くじを持っていたらそれを10億円で買います。
宝くじは税金がかかりませんので、6億円はそのままきれいなお金として使用ができます。
使えない10億円よりも使える6億円の方が価値が高いからです。
AMLとCFTとFATF
・AML(anti-money laundering)とは
アンチマネー・ロンダリング(AML)とはマネーロンダリングを防ぐ対策のことです。
これは、不自然な取引の監視、反社会的勢力やテロ組織の資金の排除、など広範囲にわたります。
・CFT(counter financing of terrorism)とは
テロ活動にお金が流れることを防止することです。
2001年9月11日にアメリカで発生した同時多発テロ以降、テロへの対策が社会から強く要望されました。
日本語だと『テロ資金供与対策』といわれています。
旅客機がハイジャックされ世界貿易センタービルに突っ込んだ映像は、いまでも忘れることなく記憶されているひとも多いと思います。
・FATF(Financiai Action Task Force)とは
1989年にフランスのパリで開催されたアルシュ・サミットでの経済宣言をうけて設立された政府間会合です。
2001年9月のアメリカの同時多発テロ発生以降は、テロ資金供与に関する国際的な対策と協力の推進に指導的役割をもっています。
日本語だと『ファトフ』、『金融活動作業部会』といわれています。
日本はFATF(ファトフ)からイエローカードを突き付けられた
2008年にFATF(ファトフ)は日本のAMLとCFTについての状況を審査しました。
(第3次対日相互審査)
その結果が散々たるひどい内容でした。
審査対象の49項目のうち10項目が非遵守(不履行)で、15項目が部分的に遵守(一部履行)と評価されてしまいました。
FATF(ファトフ)は各国の金融の専門家で構成されています。
お互いの国同士で調査をしています。
つまり、どういう事かというと、
・マネーロンダリングを防ぐ対策
・テロ活動にお金が流れる対策
これらについて、日本はちゃんとした対策をやっていないじゃないか!!
とほかの国の金融の専門家からイエローカードをもらってしまったのです。
このまま放置しておくと、イエローカードがレッドカードになってしまします。
もしレッドカードになると、他の国の金融機関との送金手続きができなくなる可能性があります。
そうなったら、日本の金融だけの問題ではなく日本経済が大混乱におちいってしまいます。
あわてた日本政府は・・
2014年11月に、改正犯罪収益移転防止法、改正テロ資金提供処罰法、国際テロ財産凍結法を相次いで制定します。
とくにカード会社で契約をするときに関係が深いのは、改正犯罪収益移転防止法です。
2016年10月に施行された改正犯罪収益移転防止法では、顔写真のない本人確認書類1点では契約ができなくなりました。
改正犯罪収益移転防止法では、特定事業者にかかわる取引に対してはすべて適用されます。
・銀行
・信託
・証券
・クレジットカード
・貸金業
この5つの事業者が特定事業者です。
保険証1点でも以前は契約が可能でしたが、今はできなくなっています。
・疑わしい取引の当局への報告義務
・200万円以上の取引はさいどの本人確認が必要
などアンチマネー・ロンダリングのために金融機関も色々と対策はおこなっている状況です。
FATF(ファトフ)による第4次対日相互審査
2019年10月にFATF(ファトフ)による第4次対日相互審査が予定されています。
これが金融業界をざわつかせているんです。
前回の第3次対日相互審査で、日本はすでにイエローカードをもらっています。
10年たってまたイエローカードをもらったら、今回はイエローカードではすまない可能性があります。
FATF(ファトフ)の審査はまず金融庁に入ります。
法律やガイドラインがしっかりつくられているか、金融指導はしっかりできているのかを約1週間かけて調査します。
そのあと今度は金融機関にたいして入ります。
法律は遵守されているのか、ガイドライン通りに運用されているのか、約1週間かけて調査します。
どこの金融機関にFATF(ファトフ)の審査は入るのか!?
金融機関にFATF(ファトフ)の審査が入ったときに、もし、もしですよ、大きな不備がでたり、間違った運用がなされていた場合を考えてみてください。
ひとつの民間事業者のせいで、日本の金融行政全体にダメ出しがされる可能性があるんです。
前回の2008年の第3次対日相互審査のときは金融庁にしかFATF(ファトフ)は入っていません。
今回は民間の金融機関にもFATF(ファトフ)の審査は入る予定です。
先ほど少し記載しましたが、特定事業者と呼ばれる事業は5つあります。
・銀行
・信託
・証券
・クレジットカード
・貸金業
この5つの事業すべてを傘下にもつ金融グループは日本に2つだけです。
・SMBCグループ:三井住友フィナンシャルグループ
とくに、三菱東京UFJ銀行(社名は当時のもの)は2014年にイランに関連した取引で370億円の罰金支払の報道がありました。
MUFJは2018年にも北朝鮮のマネーロンダリングに関する疑惑報道もでています。
こうしたことから、審査の対象になるのはMUFGが本命です。
ですが、SMBCグループかもしれませんし、もしかしたら両方かもしれません。
また、傘下のどの会社に入るのかも不明です。
銀行と貸金業の違いは???
銀行と貸金業は日本では歴史的な経緯もあり、明確にわかれています。
ただ、海外では同じとみなされています。
つまり、【プロミス】も【アコム】も海外からみると銀行業なんです。
何が言いたいかというと、消費者金融会社にFATF(ファトフ)の審査がはいる可能性は0ではないんです。
とくに、メガバンクの傘下に入っている、【プロミス】、【SMBCモビット】、【アコム】は十分に可能性があります。
日本は対策が遅れてしまっているのが現状
日本で生活していると、マネーロンダリングだのテロ資金だのって、
いまいちピンとこない内容なので、金融業界全体でも対策が遅れてしまっているのは事実です。
カードローンや金融などの詳しい内容についてはこちらのサイトも参考にしてみてください。